2009年10月31日土曜日

ゲーツ発言はブラフ(脅し)だ

 10月31日付読売新聞の夕刊「とれんど」に書かれた論説委員の記事を見て、あたしは驚いた。こういう記事を臆面もなく載せてしまう新聞はいったいどこの国の新聞だ。

 その記事は、先日来日したゲーツ米国防長官が沖縄普天間飛行場の移設問題で、「代替施設なしではグアムの移転もない。グアム移転なしでは沖縄の兵員縮小と土地返還もない」と指摘したことに対し、鳩山政権が即座に反応しなかったことを批判している。鳩山政権のそういう態度を、先の日米大戦がどうして起こったかその原因になぞらえて、もし日本が大統領来日までに決断しなかったら何が起こるかわからないぞ、と日本国民を脅すような内容になっている。かっての軍事国日本の侵略戦争の原因を、以後60数年間戦争を起こしたことのない日本の鳩山政権の対米交渉になぞらえるという強引な記事の展開にも驚いてしまう。

 ご丁寧にも「最初に火を噴くのはおそらく米議会だ。『日本は不熱心だ。予算からグアム移転費用を削ってしまえ』と狼煙があがれば、大統領といえども覆せなくなる」と日本をつるし上げるシナリオまで書いてくれている。これこそ記事による日本国民に対するブラフではないのか。

 上記のことにしても、沖縄の米海兵隊のグアムの移転があたかも日本だけが望んだような発言だが、アメリカも望んだことをご存じないか。いかにして移転費用の多くを日本に負担してもらうかに米国が励んだ紆余曲折があったのを知らぬはずがなかろう。

 記事はゲーツ米国防長官の発言が単なる脅しではない、と暗に言っているがそれはあたしたちにも分かる。ただ普天間飛行場の移設問題と絡み合わせて、他の問題を持ち出してくることこそ、ブラフの最たるものではないか。鳩山政権は米政府が実行できない単なる脅しとは受け取ってはいないようだ。その上での行動だと思う。思いのままにならぬ鳩山政権に対し、まだどういう結果を出すかわからぬ米政府に先んじて、ことさら大げさに想像たくましく脅しに満ちた記事を載せる日本の新聞こそ問題だ。

 言っておくが、日本は侵略戦争を始めたのではないのだ。基地問題をはじめとした種々のことについて米国との対等な交渉を望んでいるだけなのだ。

 日本国内で日本人が作っている新聞が、鳩山内閣は「ゲーツ発言をブラフと見誤っている、米国は本気だぞ」などと米政府の代弁をしてどうなる。購読数が日本一だと日本の大新聞を自負するならば、日本国民の視点で記事を書いてもらいたい。日本政府に対する自虐的な記事を書いて他国の代弁記事に力を注ぐようなことをせず、本当に鳩山内閣が日米外交の危機的な状況に鈍感であるというならば、自社の社説などでそのことを指摘すればいいことではないか。

 アメリカという大国に軸足を置いた、まるで「虎の威を借る」ような記事でしか掲載できない勇気しか持ち合わせていないとはあたしは思わない。そして、あたしの興味はこの記事が沖縄の新聞にも掲載されたかどうか知りたいことにある。

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