2010年3月9日火曜日

普天間基地移設と鳩山首相の変節

 普天間基地移設について、社民党と国民新党がそれぞれ移設先案を沖縄基地問題検討委員会に提示した。社民党が国外もしくは沖縄県外の暫定移設など、国民新党が沖縄キャンプ・シュワブ陸上部、嘉手納米空軍基地への統合を提案しているが肝心の民主党の案はさっぱりわからぬ。沖縄基地問題検討委員会の委員長でもある平野博文官房長官はこの件について、鳩山首相と意見のすり合わせをしたとは思われないような発言をしている。女房役でもある官房長官の独走は、言い換えれば鳩山首相の無能無策ぶりを証明することでもある。いままでの鳩山首相の控えめな発言と行動は、背後にそれなりの戦略があってのことだろうと、今日の今までじっと見てきたが、なんのことはない、あたしが鳩山首相を買いかぶり過ぎたんだ。

 昨年の衆院選で鳩山首相は「国外、少なくとも県外移設」と明言したその約束はどうなっているのか。すくなくとも政権を握り、首相の座にあれば初志の思いを貫く方向で政権を運営していくのが当たり前だろうに、連立内閣が誕生してからこの半年間、鳩山首相がこの実現に向かって死に物狂いで動き回ったという形跡はまったくと言っていいほど見られなかった。オバマ大統領が来日した時も、「トラスト・ミー」と意味不明な言葉を大統領に投げかけて相手を煙に巻いただけである。

 「友愛」という言葉だけを振りまいていれば、平和が訪れ、国民が幸福になり、いろいろ問題も自然に解決するわけがないじゃないか。首相といえど、閣僚や官僚に向かって、時には怒り、叫び、叱って、自公政権が残してくれた膨大な負の遺産を片付けていかないと政権交代の意味がない。そういう意味では、沖縄県民の多くの反対意見を握りつぶして、沖縄普天間基地の移設先に辺野古沖が選ばれたという自民党政権時の負の遺産を解消することは、鳩山政権のみならず民主党がイの一番に解決しなければならない課題でもあるのだ。超不況対策と違って、こちらははっきりした相手があり、その相手を納得させればよいことだから、あらゆる智恵を絞れば解決できぬことはあるまい。さもなくば「国外、少なくとも県外移設」という言葉を妄言として国民に詫びることだ。

 この普天間基地移設に関する平野官房長官の一連の発言の中には、移設先を沖縄県内に固めつつあるという政府の意向をそれとなく伝えているような姿勢も垣間見られるようだ。それによって世論特に沖縄県民と議会がどのように動くかを見極めようとしている。これが鳩山首相の高度(?)な戦術によるものか、あるいは他の者の指図によるものかはまだはっきりしない。県外移設が実現できなかった責任を鳩山首相が取りたくないのであれば、県内移設に前向きな人物を作り上げるしかないのだ。これが事実とすればすれば、一部マスコミが報じているように、この問題の尻拭いをさせられるのは官房長官であろう。そうであれば官房長官の開き直ったような発言はある程度理解できる。

 問題は、もし基地の移設先が沖縄県内に決まれば、鳩山首相が力説した「少なくと県外移設」の公約に背くことである。首相はこの移設先について語る時、卑怯にも「ゼロベース」と言うが「ゼロベース」ではなかろう。これでは沖縄県内も含まれてしまう。自分が国民に約束した言葉を今も実行する気でいるならば、まず「国外」をベースに議論をスタートすることが基本であろう。また小沢幹事長が普天間基地の移設先について「沖縄県内というのであれば選挙にならない」と否定的な見方をしていることが8日、わかった。選挙のために移設先を考えると言うのもどうかと思うが、5月の訪米が実現して、仮にもオバマ大統領に会うことができたならば、おそらく普天間基地移設問題について何らかの打開策を持って帰国するだろう、とあたしは思う。アメリカ政府はこの時点で、いや今の時点ですでに日本の交渉相手は小沢幹事長だという暗黙の了解を各米幹部と交わしているだろう。

 日本国の総理大臣ではなく、一党の幹事長が米政府の幹部と会う(話し合う)という屈辱に鳩山首相が耐え得るか、適当な辞任理由を今から探しているかもしれない。

 沖縄県民の負担を減らすという目的で検討された普天間の移設先が、現行の辺野古沖案となんら変わらぬキャンプ・シュワブ陸上案や嘉手納米空軍基地への統合(たとえ期限付きであったとしても)などに決まったとしたら、この政権交代は沖縄県民にとってどういう意味があったのだろう。一時のぬか喜びを味わった分、かえって奈落の底に落とされたような気持ちになるのは間違いないだろう。このことを米基地を遠く離れ、日常ではほとんど意識しないあたしたちが日本国民として充分に思いやることは当然であろう。

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