2010年4月10日土曜日

高速道路新料金の評価はまだら模様?

 6月から実施される高速道路の新料金が9日、発表された。このことを報じる新聞は、「実質値上げ」「週末ドライバー不満」「歓迎より不安」などの見出しを多く掲げた。これらの新聞は、民主党が掲げた高速道路無料化に批判的な意見を数多く載せたにも関わらず、その当時と相反する記事を載せて、あいも変わらず幼稚なあまのじゃく的性格を発揮している。

 無料化に批判的であったのは何も国民だけではない。昨年の各新聞の社説には「『高速道路料金』無料化は合点がいかぬ」(朝日2009年8月24日)、「高速道路無料化、素朴な疑問に答えよ」(東京新聞2009年9月23日)、「高速道路無料化、地元の足が奪われかねない」(読売2009年11月4日)など大部分が無料化に批判的な記事であった。正直あたしも休日の高速道路1000円ポッキリを体験して、無料化は現実的でないと思ったものだ。

 で、今回の高速道路新料金について、無料化に批判的であった新聞がまたまた批判するのはどうしてか。無料化の案でないから批判するに当たらないはずだ。第一、今の閣僚の能力からしてマスコミが期待する満点の案が出くるはずが無く、あたしは将来の高速道路無料化を目指す政権が作成した過渡的な案としてはこんなもんだろうと思った。

 条件によって現行の料金より多少高くなることもあるだろうが、部分的なことを捉えてそれがすべてのような報道をするマスコミの姿勢は相変わらずだ。そんなことより、今回の料金発表について本四フェリー会社の声がマスコミにあまり反映されないのはどうしてだろう。昨年3月以来、本四架橋の通行料金が休日割引で安くなって、経営難に陥ったフェリー会社の映像をさかんに流したマスコミはどこにいる。無料化すれば高速道路の渋滞が今以上に激しくなるなどの理由で、無料化に反対の意見が70%近くあったという世論調査はどうした。

 流通関係でどうしても長距離高速道路を利用せざるを得ない人たちの声を聞かず、たかがレジャーのために繰り出すドライバーの不満の声だけを聞いて、したり顔で「ここにも不満の声があります」というアナウンサーをはじめ、今回の新料金に対して批判的なマスコミは、じゃ一体どういうものが満点の料金制度と思っているのだろう。

 今度の高速道路の新料金制度は11年3月までの試行案である。その結果を見ながら見直しをするというから拙速な批判はあたらない。

 渋滞が起こるから、地球温暖化対策に逆行するから、競合交通機関が衰退するからなどの理由で高速道路の無料化は反対と叫んでおきながら、平日休日の区別を無くし、ETCの有無も問わずと今までより高速道路が利用しやすくなるにもかかわらず、1000円ポッキリと比べれば少し高めの新料金制度が発表されると、とたんに反対の声をあげるのはつじつまが合わないのではないかと思う。

 この鳩山政権下の国土交通省で、この高速道路新料金体制はでき過ぎだと思うのはあたしだけだろうか。この政権が新制度を運用していろいろと出てくるであろうトラブルをどの程度予知して、どのように処理するか、あたしはそっちの方に興味がある。子ども手当てのように数の論理で国会内で決まってしまい、手当てを一方的に与えるものは国民の間に不満の生じようがない。ところが高速道路の料金体制は利害が直接国民に及ぶことだ。政権担当能力を測る絶好の材料ではないか。

 今はどんな山奥に行っても、真っ白なガードレールと車の影も見当たらぬ立派なアスファルト道路がある。昭和2,30年ごろの日本の道路と比べると隔世の感がある。このことで今までの道路行政のすべてが正しかったとは言わないが、一定の役割を果たしたことは確かだ。だからといって予算を闇雲に高速道路につぎ込む政策は、多くの利権を生み出す元凶となっている。民主党が高速道路の無料化を唱えたのも、その利権を少しでも無くすためだと聞いている。ここに目を向けないと、無料化すると渋滞が激しくなるとか、公共交通機関が衰退するなど目先のことに気をとられて、問題の本質を見失ってしまう。こういう利権が無くなれば、無料化であろうとそうでなかろうと国の進む方向に大した影響はないものである。

 残念ながらは鳩山政権は政治主導を目指したものの、いまや足元を見られて官僚に完全に取り込まれている。おそらく今度の高速道路新料金も原案はすべて官僚が作ったものであろう。国土交通大臣の意向がどれほど反映されているのか知りようがないが、官僚たちがこの案を発表することによるマスコミや国民の反応を作成段階ですべて織り込んでいたのは間違いないだろう。大臣に従順に見せかけて、この新料金制度に対するマスコミや国民の批判を鳩山政権に向けさせることはお手のものだ。こういう理由からあたしは、官僚に完全に取り込まれた大臣が発表した案にしては上出来だといっているのである。

 良くも悪くも民主党のマニフェストの一部の骨組みらしきものがはじめて出てきた。これをステップにして高速道路無料化に突き進むか、世論を意識して有料の一部手直しをするか、どちらにしても政権能力がないと世論はそっぽを向いてしまうから、5月末からこの新料金制度が実施される6月初は鳩山政権の正念場だ。

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