2009年12月9日水曜日

「国民の生活が第一」は政権を取るための道具だったのか

 鳩山内閣の一連のゴタゴタは、あたしたち国民にどういう印象を与えているか首相はご存じないらしい。

 普天間飛行場の移設問題をはじめとした他のすじみち不明な政策に対し、各大臣が勝手気ままな意見を言い、内閣の統制のなさをこれでもかと見せつけている。最近にいたっては第2次補正予算の立案に際し、大臣同士のあきれたバトルが展開されるに至っては、あたしはあきれて口もきけない。

 鳩山首相はオバマ米大統領が来日した時に、「Trust me(私を信じて)」と言ったらしいが、一国のトップ同士が取り交わした言葉を、場末の公園で恋人同士が交わした言葉程度の軽さで葬り投げる国の日本の総理とは一体何?

 鳩山首相は「普天間飛行場移設問題も大事、沖縄の住民の意見も大事、連立政権も大事」と言っているが、そのような状況の中だからこそ躊躇なく決断するのが首相の務めではないのか。政治では、すべての人が納得する解決策はありえない残酷な世界だということを鳩山首相は知らぬらしい。

 首相や閣僚の一挙一動で日本の経済や国民の生活が揺れ動くことを、鳩山内閣の各大臣が十分に判っているとはとても思えない。もし判っているのなら、安易な発言や行動はしないはずだ。また、普天間のように非常に大事な問題を、鳩山首相には自分で解決しようとする姿勢がみられず、「時間」に解決させようとしている。名護市長選の結果や沖縄県民の世論の結果を利用して結論を導こうとしているが、これは「他力本願」のなにものでもない。ここでいう「他力本願」とは他人任せという意味で使ったのではない。

 ここから先はあくまでもあたしの妄想によるもので誤解しないようにしていただきたい。「他力」とは仏教言葉で「阿弥陀如来の力」だけを指し、このことで本願(約束)を果たそうということだ。このことになぞらえて言えば、おそらく鳩山家は神道で、名護市長選の結果も沖縄県民の世論もすべて神の定めたもので、鳩山首相はそれに従って結論を下そうとしているのではないか。今までの政治の重要課題に対して、天の声か何かを待っているような取り組みと、「友愛」をはじめとして鳩山首相がこれまでに発言してきた説法にも似た独特の言い回しが、他人事のようにそして宗教じみて聞こえたのも理解できる。しかし外交や日本の政治やあたしたちの将来の生活が、もしこのようなオカルトじみた方法で決められるとしたらこれほど国民にとって最悪なことはない。これでは政治家としての資質を疑われるどころか、危険な方向に行くのを阻止しなければと考えられても仕方あるまい。

 あたしは先に「天の声を待っている」と書いたが、もう一つの神の声、北国の岩手の声がある。マスコミでは鳩山政権と共に二重政権構造を成しているといわれている小沢幹事長の声である。良くも悪くも小沢幹事長が現政権を99%操っているのは間違いない。

 その極端な例が12月4日に首相官邸で鳩山首相と小沢幹事長の会談をめぐる二人の食い違いである。鳩山政権を操るためには、幻になってでも押しかける小沢幹事長を考えれば、あたしの予想は大きく外れてはいまい。

 内閣でゴタゴタの元になっている閣僚を切れない、いや少し譲って注意できないその線上には小沢幹事長の意向が働いているのではないか。また、あの行政刷新会議の事業仕分けメンバーの人選ミスで、仙谷行政刷新会議担当大臣が即座に小沢幹事長に対して頭を下げたことや、今度の小沢幹事長の中国訪問では党所属の国会議員が143人と支持者ら計630人が同行するのをみても、鳩山政権に対する彼自身の影響力を誇示する意図がミエミエなのは明らかである。

 今のようにどちらを向いても難題ばかり山積し、その解決のメドもつかない状態では、いっそのこと鳩山首相は総理の座を小沢幹事長に譲ったほうがこの政権はうまくいくのではないか、とあたしは動物感覚的に思う。運転している隣の助手席の者が、ひっきりなしにハンドルに手を伸ばしていたら危なくてしょうがない。そんな時あたしは運転を替わる。

 民主党が掲げる政策の多くは、国民の願いに沿ったものが多い。そういう意味合いでは「国民の生活が一番」という民主党のキャッチフレーズは大きく外れてはいない。しかし閣内の諍いで「国民の生活が一番」という政策が置き去りにされ、あたしたちが選択もしなかった国民新党や社民党の政策に引っ張られる連立政権はあたしの想定外だ。このことのみならず、他方では外交と経済をうまく操ることができない現政権は無能力だと、国民ばかりか外国からも指摘される前に何らかの荒治療をしないと、早晩与党民主党は、小泉元首相が4日に自民党幹部の前で予言したように「来年の参院選までもたない」かもしれないし、自民党が「2,3年雌伏の時を過ごしたら」今度こそ手ごわい自民党政権が生まれる恐れもある。ひょっとすると小泉元首相は再出馬を狙うかもしれない。

 民主党の若手や中堅幹部の中に少なからずいるすばらしい能力をもった議員が、今のようなみっともない政権運営を見て幻滅を感じるとしたら、これは民主党にとっても日本の国にとっても大変不幸な事である。

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